台本分析 セーラームーン6話「正義の味方はおじさんが好き」

次回予告はコスレポでしたが
今週はひょんなことからネット記事の取材を受けさせていただきまして
そちらの関連で台本分析をやりたくなったので挟みます
無印の中で個人的にお気に入りの私服が登場する6話です

6話仮題「正義の味方はおじさんが好き」 本編「守れ恋の曲! うさぎはキューピッド」

脚本　隅沢克之　演出　幾原邦彦　作画監督　只野和子
またも幾原ワールド大全開な一話
幾原さん自身にとっても思い出深い一話のようです（ツイッターより


取材いただいた記事はこちら

28年前、セーラームーンに出会って私の人生は決まった。夢みたいなクローゼットが最高すぎる！


折り込んで解説いきます







今回は私服話から派生していくので
私服の解説からまずはご覧下さい

第6話は大人の恋にうさぎちゃんが首を突っ込むストーリーなのですが
全体的にシックな雰囲気で、子供心にとても印象的な回でした
うさぎちゃんが変装ペンで変身する時に
「かっこいい大人のミュージシャンになーれ！」と
わざわざ"大人の"を付け加えている所も
背伸びをしている等身大の女の子が見事に表現されていて
とても共感できました

このお話で大事な演出に使われているのは「雨」
シトシトと降る雨が、街の雰囲気を物寂しげにしている所が重要ポイントです
実はこの私服は今日がおろしたて
転んで濡らした矢先、おニューの服なのに！と
本編で彼女が嘆いているのですが、お出かけが憂鬱になりそうな雨の日に
わざわざ新しい服を選ぶ所からも
少しでも気分を上げる為にオシャレをした
うさぎちゃんの乙女心が見えるようでトキメキます

そこに加え、私服のカラーに合わせた傘までさしているんです
正に雨の日のお出かけ用として完成された私服といっても過言ではありません
この一着は雨の日のストーリーを最大限に生かす演出をされた幾原邦彦さんと
作画監督只野和子さんの私服デザインが融合して作り上げられた奇跡の私服だと思います

質問に回答した一部分を抜粋
個人的解釈をざっと並べました　おう、長いな
こんなに長くて重い愛を綺麗に整理して記事にしてくださったライターさんには感謝しかない
ツイッターは文字数140文字なので普段は要点の中でも厳選した
ごく一部のポイントしか伝えることができないんですが
本当は一着でこれくらい語りたい、そんなワタシ
いやあツイッターのうさこさんって無口よね　てへぺろ！

この回答を答えるに当たり
脚本から演出がどう加わっていったのかを確認するべく台本を開いた次第です
軽く追加で感想をば

ストーリーの全体図は脚本の時点で完成されていて
幾原さんはそこにうさぎのあどけなさを足す演出を施した感じ
うさぎの幼さが強調されると、しっとりした大人の世界観が程よく崩されて
ギュッと締まるんですよ　いやすごいよ幾原マジック

いや実はちょっとドキハラしたよね
R時代の幾原さんは脚本から大改変する事が多々あったから
（R劇場版とかルベウスのキャラ作りとか）
今回もよもや雨の演出ご本人で加えたのかとすら思ったけど
脚本の隅沢さんがとてもしっとりした素敵な雨の日のお話を書いてくださっていた
幾原さんが暴走せず、程よくアレンジしていて新鮮でした（言い方よ



ああだけどひとつ、ここひとつだけ突っ込ませて……
雨出ゆうすけ（36才）
待って、おじさんって言わないであげて……とつい突っ込みたくなる年齢
でも程よくくたびれた感じのビジュアルが36には見えなかった当時
45歳くらいに見えたよね
ちゃんと中学生から見ておじさんに見える人物にしてくださった只野さん


上でも語ったけどここがとても大事
「服がびっしょり」を「おニューの服なのに」とさり気なく付け加えた神演出
おニューの服が汚れてテンションはダダ下がり
返して言えば、気合を入れた服だったから余計にショックというこの乙女心のエッセンス
うさぎちゃんの可愛らしさが引き立つ魔法の一言です
そうきっと幾原さんは魔法使い
そしてそんな雰囲気を読んだ私服をデザインした只野さんも魔法使い
雨の日をストーリーにした隅沢さんも魔法使い

この私服、普段ラフで着ている服よりも少し
よそ行きみたいなイメージで自分の中で固まっているんだけど
こういうさりげない一言から印象が固まっていくのだなと
大人になった今分析してはニヤニヤする楽しい遊び



こちらもとても大事な一言
「かっこいいミュージシャン」を「かっこいい大人のミュージシャン」に追加変更
これによりうさぎちゃんの背伸び感が倍増し
大人のお店に潜入する雰囲気が上がる
神や、神

話は変わるけど、当時この話で自分は「サブリミナル効果」
という単語を覚えました
子供心にすごく耳に新しい言葉で、すげえ強く印象に残ったんだよなあ

足りない解説を付け足してやっと満足したのでそろそろ終わる
ではではまた来週